岡山地方裁判所 昭和27年(行モ)2号 決定
申請人 高草芳三郎
被申請人 真金町議会
一、主 文
被申請人が昭和二十七年八月三日の臨時議会の議決によつて通告した、申請人に対する真金町議会議員よりの除名処分は、本案判決確定に至るまでその執行を停止する。
二、理 由
申請代理人は主文同旨の裁判を求め、その申請の理由とするところは、申請人は被申請人議会の議員であるが、被申請人は申請の趣旨記載の臨時議会において、申請人が被申請人の議会議決を無視してその秩序を破り、また、議会全体を誹謗してその体面を汚すような言動を敢てした、との理由で、申請人を議員から除名する旨の懲罰を議決し、翌四日申請人に対しこれが除名を通告して申請人を除名した。しかし、申請人はそのような言動を敢えてしたことはない。尤も申請人は右臨時議会の議場において、瀬川裏悪水路工事の議案審議に際り、被申請人から予定どおりの工事と、陳謝を要求せられてこれを拒絶したことはあるが、申請人としてはこのような要求を受くる何等の理由もなかつた。殊に議会が一議員に対しかような工事を要求するのは越権の行為であるばかりでなく、同議会の会議規則第三十条には、議会が議員の懲罰事犯に対しこれを懲罰するには、先づ懲罰委員会に付議してその審議を経た上で議決するよう規定せられているのに、被申請人は右手続を経ないで、申請人に対する陳謝の懲罰を議決し、これを要求するの違法を犯したのであつて、かゝる違法行為に対し申請人が叙上拒否の態度に出でたのは当然である。しかるに、右違法の要求が議場で申請人により拒否せらるるや、被申請人は感情の趨くところ、さらに違法にも何等正当の理由もなく、かつ右会議規則第三十条の手続も経ないで、申請人に対する叙上除名の懲罰を議決し、申請人を除名するに至つたのである。そこで申請人は曩に御庁に対し、右除名処分取消の訴を提起し、目下審理中であるが、判決の確定を俟つていては申請人の地位は今後永らく不定のまゝに経過し、議員としての職務の遂行を阻止され、これがため申請人の蒙る損害は到底償い難いものであるので、こゝに本案判決の確定に至るまで、右除名処分の執行の停止を求めるため、本件申請に及んだというのである。
よつて案ずるに、一件記録によれば、叙上の事実関係は一応疏明せられ、本件申請は理由があるものと認めらるゝので、行政事件訴訟特例法第十条に則り主文のとおり決定する。
(裁判官 井上開了 辻川利正 富田善哉)